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東芝のような不適切会計・粉飾決算は、なぜ無くならないか?

      2016/01/01

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以前訪問したベンチャー企業の経理部に、大企業の粉飾事件に関わった方が転職されていて、実際に行った粉飾の手法をたくさん生講義して頂いたことがあります。

実際に事件に関わった方の生のお話というものは、とても興味深かったです。

さて今回は、粉飾決算に関連して、東芝の不適切会計についてのお話です。

ライブドア事件のときも、オリンパスのときも“粉飾”という言葉を多くのメディアは使用していたと記憶していますが、東芝の件に関しては“粉飾”という言葉ではなく、“不適切”という言葉を使用していることには、なんらかの思惑がありそうです。ただこれは今日の本題ではありません。


なぜ粉飾決算はなくならないか?

2007年頃、J・SOXの導入を目前にして、J・SOXコンサルなどが凄く流行りました。そもそもSOXというのは、アメリカの会計スキャンダルに端を発して出来上がったもので、会社内部にしっかりとした内部統制を築きあげて、会計不正を減らし、ディスクロージャーに対する信頼を回復させるという目的がありました。

ちなみに内部統制とは、例えば、新規事業投資するときには、会社の内部で稟議書を作って、決裁権限者の承認が必要なはずですが、この稟議書+承認という仕組みが内部統制の一例です。

またSOXには、内部統制を構築して、業務効率を上げるという建前上の理由もありましたが、SOXを導入したことで逆に会社の業務効率が落ちた会社もあるはずです。

東芝のような大規模の会社がSOXを導入する際は、相当な導入コストが発生しているはずで、数億では済まなかったと思います。

さて冒頭で説明したように、SOXには会計不正、すなわち粉飾決算を失くすという目的があったわけですが、今にいたっても粉飾決算は無くなっていません。

自分自身も2007年当時、内部統制の導入コンサルに携わっていましたが、そのときからこのSOX制度は、制度開始後すぐに形骸化すると予想していました。おそらく、多くの会計士が同じ予想をしていたと思います。

今後も、SOXは粉飾決算を失くすという目的を達成できない可能性が高い。SOXは形骸化している。

でも、監査法人サイドからJ・SOX不要論が唱えられることはまずありません。なぜかと言うと監査報酬の値下げ要因になるからです。

この制度があることで、多額のコストを負担している上場企業、IPOを目論むベンチャー企業はたくさんあるはずです。

多額のコストを負担して導入しても、その効果には疑問で、費用対効果が悪い。

会社内部に内部統制という仕組みは必要ですが、J・SOXという制度は、導入してもしなくても実質的な効果はほぼ変わらないと思います。

監査の仕組みにも弱点

昨日くらいからSNS上で、監査法人の責任がうんぬんかんぬんという記事が流通しています。

実際に監査法人に責任があるか否かは、今後の調査などで明らかになることで、今の段階ではハッキリしたことはわかりません。

さて監査という制度については、専門職とそれ以外のビジネスマンの間で認識にズレがあると思います。

監査は、すべての会計不正を発見するものと思われがちですが、実際には全ての会計不正を発見することは難しいのが現実で、また監査制度も全ての不正を発見することを前提とはしていないはずです。

実際問題、組織ぐるみで不正をされ、しかも関係書類を完璧に偽造されると、不正を発見するのはまず無理です。

その理由の1つに、監査法人には、検察や国税と違って、強制権限がないことが影響していると思います。

例えば、「●○に関する資料の提出お願いします」または「この会計処理を修正してください」と会社側に依頼しても、会社側に拒否されれば、監査法人側としてはお手上げです。

こうした場合、監査法人側は監査意見を出さないという手段で対抗することができますが、この手段をとるには現実的にハードルが高い。

特に東芝のような巨大企業になると、影響が大きすぎるため、監査法人側がこの手段を採るには、腹をくくる必要があります。この点も会社側に見透かされているのではないかと思います。

いずれにしても現行の監査制度のもとで、監査法人側は全ての会計不正を発見することは、とてつもなく困難です。

もちろん、不正を発見できなかったことに落ち度がある場合は当然、監査法人側は責任を負います。

監査報酬の仕組みも問題

監査報酬は、会社が監査法人に支払います。東芝の件についても同様で、直近の有価証券報告書を見ると、報酬として東芝から担当の監査法人に年間約10億円が支払われています。

監査法人が、自分達に報酬を支払ってくれている会社に対して、不利益な取り扱いや厳しい対応をすることは心理的な抵抗が皆無とは言えないでしょう。

このことも問題点の1つです。

ちなみに、東芝を担当している監査法人は新日本監査法人(EY)ですが、EYの直近の売上高は964億円で、これに占める東芝からの収入は約1%、仮に東芝の仕事を失ったとしても経済的にEYにとっては痛くも痒くもないはずです。

ただ監査法人側としては、東芝のようなメガクライアントは失いたくないというのが本音でしょう。

まとめ

1. J・SOXは形骸化している
2. そもそも監査制度にも弱点がある
3. 監査報酬の仕組みも微妙に問題がある

したがって、会社側が粉飾決算をしようと思えば出来る状況にある。そういう意味で、粉飾決算を失くすのは厳しい。

監査という枠組みそのものが完璧とは言えない状況にあるので、まだ発覚していない現在進行中の粉飾決算をしている会社が少なくとも1社はあると考えても不思議ではない。

現に、オリンパスの粉飾が世間を賑わせていたときに、東芝の粉飾が密かに進行していたわけだからね。

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