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【まとめ】種類株式のキホンと活用例

      2017/11/18

種類株式について勉強します

種類株式という言葉は、経営に近いところで仕事をしていないと、なかなか聞き慣れない言葉かもしれない。ただ株式投資をしている人達にとっては、聞いたことのある言葉だと思います。トヨタが発行したAA型種類株式で、一時期盛り上がっていましたので。

種類株式は、事業承継の場面だけではなく、ベンチャー企業の資金調達などの際にも活用されることがあります。

そこで今回は、種類株式のキホンと、種類株式の活用イメージについて、ざっくりとお話しします。

普通株式

まずは種類株式について説明する前に、普通株式について説明します。

例えば、ネット証券などを通じて上場企業の株式をトレードすることがあると思います。通常の取引で売買している株式は、基本的に普通株式です。

ネット証券を通じたトレードで株式を取得すると、会社に対して持ち株数に応じて配当金を請求できるようになるし、株主総会の決議に参加できる議決権(一株一議決権)も取得します。簡単に説明すると、これが普通株式です。

株式を取得することで、配当請求権と議決権という株主にとっては代表的な権利を得ることができます。

ただ取得する株式によっては、普通株式よりも多い配当を請求することができたり、あるいは、議決権をナシにする株式も発行することができます。これが種類株式の一例です。

で、上場企業が発行している株式はほとんどが普通株式ですが、上場企業が種類株式を発行していはいけないわけではないんですね。例えば、冒頭で触れたトヨタ自動車以外でも、CYBERDYNEは種類株式を発行しています。

まずはざっくりと、種類株式の内容とその活用イメージについて説明します。種類株式は全部で9つあります。

種類株式1. 剰余金の配当

剰余金の配当(配当金)について、普通株式と異なる内容の株式を発行することができることになっています。これがいわゆる「剰余金の配当」についての種類株式です。

例えば、配当金を普通株式よりも優先的に支払うことにしたり、配当金支払い時の金利水準にスライドして支払うような方法もあります(金利+〇%のような支払い)。

またトラッキング・ストックの発行も可能です。このトラッキング・ストックというのは、会社がその特定の事業部や、子会社の業績などに配当を連動させるような株式のことで、実際にソニーがトラッキング・ストックを発行した実績があります。

剰余金の配当に関する種類株式の活用イメージとしては、例えば、会社に対して出資はして欲しいれども、「経営に口は出して欲しくない」ような場合にこの種類株式を活用できます。

後ほど説明する「議決権のない株式」と組み合わせて、優先配当はするけれども、議決権のない株式とすれば、経営に口を挟まれることなく資金調達することも可能になりますね。

種類株式2. 残余財産の分配

残余財産の分配について、普通株式と異なる内容の株式を発行することができることになっています。これがいわゆる「残余財産の分配」についての種類株式です。

例えば、会社が解散などで消滅することになった場合には、まずは債権者に弁済する必要がありますが、それでも会社の財産が余った(残余財産)ときには株主に分配することになります。この分配に関して、出資の払い込み額に相当する金額については他の株式に優先して返還してもらうような内容の株式が、残余財産の分配に関する種類株式です。

そもそも会社は将来的に継続することを前提として設立されていて、経営者も夢と目標を持って会社を設立しているはずです。こうした状況にあるので、会社が消滅することを前提とした「残余財産の分配」に関する種類株式は、実際の利用件数としては(全体としては)少ないのではないかと思います。

ただ、ベンチャー企業の場合だと、ちょっと話が違ってきます。詳細は省きますが、残余財産について優先的な株式をエンジェルなどの投資家に与えることによって、シードやアーリーのベンチャー企業に対して思い切った投資ができるような仕組みにすることができます。

種類株式3. 議決権制限株式

議決権制限株式も、種類株式の1つで、株主総会で議決権を行使できる事項について制限されている株式です。剰余金の配当のところでも簡単に説明したように、完全に議決権を奪うこともできます。

議決権を完全に奪うことも、一部の決議事項についてだけ議決権を制限することもできるということですね。

議決権制限株式の活用イメージとしては、例えば、次のようになります。登場人物は甲と乙とします。

甲はある薬剤を開発するために、相当の研究開発費を突っ込んだので、手元のお金はスッカラカンなんですが、研究開発した甲斐があって、その薬剤についての特許を取得した。甲はお金がスッカラカンで、研究開発に没頭していたこともあり、ネットワークがない。したがって、販路拡大も期待できない。

そこでネットワークも資金も豊富な経団連の理事乙が、以前からたまたま甲と顔見知りだったこともあり、甲の会社に出資することにしました。乙はネットワーク、販路、資金は豊富だけれども、特許も薬剤もない。

甲は経営に口を挟まれたくないので、議決権のない株式を発行して乙から資金調達することにし、販路開拓の見返りとして、別途、報酬を支払うことにしました。

※ 経団連というのは、あくまでも例え話です。

このように資金は調達したいけれども、経営に口を挟まれたくないときは議決権制限株式を活用するという選択肢があります。

余談ですが、上場基準との関連で議決権制限株式について補足すると、議決権制限プランというものがあります。

議決権制限プランというのは、例えば、買収防衛策として、議決権制限株式を活用して、発行済み株式の15%以上の株式を保有する株主の議決権は行使できないとするような会社内部の取り決めのことです。

こうした議決権制限プランのある株式は上場できないことになっています (新規上場ガイドブック2017 市場第一部・第二部 P100参照)

また事業承継の場面に関しては、後継者にだけ議決権を与え、その他の相続人が相続する株式については議決権を制限するという活用方法もあります。

種類株式4. 譲渡制限株式

譲渡制限株式というのは、その名の通り、譲渡が制限された株式です。種類株式の一種で、譲渡するには、株主総会や取締役会の承認が必要になります。どの機関が承認するかは、会社によります。

この譲渡制限は、普通株式にも、株式の種類ごとにも設定することができます。

(会社法上は)会社に出資したことで取得する株式は、いつでも売買をして、出資したお金を回収できるのが大原則となっているんですが、次のような理由があって、株式の譲渡を制限することもできます。

これは、株式の譲渡に際して会社の承認を要することで(譲渡制限することで)、会社にとって好ましくないものを排除し経営を安定させる狙いがあるからです。

例えば、取締役兼株主としてA、B、Cがいるとします。CがAと犬猿の仲のDに株式を譲渡すると、AとCに言い争いが生じてしまって、会社の経営が円滑に進まないリスクが生じてしまいます。

こうしたリスクを排除するために、予め株式の譲渡を制限することが可能なんですね。

おそらく、日本の中小企業の株式には、ほぼ全てこの譲渡制限規定が付いているはずで、この規定の付いていない中小企業は見たことがない。

種類株式5. 取得請求権付株式

取得請求権付き株式というのは、株主が会社に対してその株式を取得するように請求できる株式のことで、これもまた種類株式の1つです。普通株式の場合には、株主は会社に対してこうした請求は基本的にできません。

活用イメージとしては、例えば、上場を目指している会社がエンジェルに対して出資を依頼したとします。けれど、エンジェルにしてみれば、この会社は本当に上場できるかどうか確信を持てないかもしれない。

エンジェルにしてみれば、例えば、7年以内に上場できない場合には会社にこの株式を買い取るよう請求できるならば出資しやすくなります。こうした場合、取得請求権付き株式の発行が選択肢の1つになるでしょう。

また、事業承継の際に、黄金株と組み合わせて活用するという方法もあります。黄金株との組み合わせパターンについては後述します。

種類株式とは

種類株式6. 取得条項付株式

取得条項付株式というのは、一定の事由が生じたことを条件として、会社が株式を取得することができる株式のことです。

上で説明した取得請求権付き株式は、「株主からの請求」で会社が取得することになる株式でしたが、この取得条項付株式は、会社が、株主の同意なく、一定の事由が生じたことを条件として強制的に取得することができる点に両者の違いがあります。

活用イメージとしては、例えば、ベンチャー企業に経営参画する役員のモチベーションを上げるために株式を保有させている場合に、退職したときにまで株式を保有させておくと、悪質な人に譲渡される可能性があります。こうなると経営の安定性がなくなって、組織再編など、大切な事項がスムーズに決議できないリスクがあります。

こうしたリスクを事前にヘッジするために、退社を条件として、会社が株式を取得する株式(取得条項付株式)を発行するという活用方法があります。

その他、買収防衛策としても活用パターンもあります。これは、簡単に説明すると、敵対的買収者が一定割合以上の株式を取得した場合に、その買収者に議決権制限株式を交付するというものです。

種類株式7. 全部取得条項付株式

全部取得条項付株式とは、株主総会の特別決議によって、その全部を取得することができる株式のことです。

取得条項付株式は、株式の取得にあたって一定の事由の発生が必要になりましたが、この全部取得条項付株式は会社の意思(特別決議)で取得できる点で、取得条項付株式と違いがあります。

活用イメージとしては、次の通りです。

典型的なパターンとしては、企業再生の場面で株主A、B、Cを、D、E、Fに総入れ替えするときのように、株主全員の入れ替えの場面で活用されることがあります。新聞などでは100%減資などという言葉が使われていることがありますが、これはいわゆる株主の総入れ替えのことを指しいます。

全部取得条項付株式を使った100%減資の手続きについては、少しテクニカルなお話しになるので省略します。

その他の活用イメージとしては、М&Aの場面で、TOBを実施した後に少数株主を排除するために活用されています。

種類株式8. 拒否権付株式

拒否権付き株式というのは、黄金株とも言われ、ざっくり言うと、株主総会決議のほかに、黄金株の株主の承認も必要となる株式のことです。

取締役会設置会社の場合には、取締役会の決議についても、黄金株の株主の承認が必要になります。

率直に言って、この黄金株は、諸刃の剣になります。

活用イメージとしては、次の通りです。

例えば、VCが少数株主としてベンチャー企業に投資する場合に、株式の保有割合が少ないながらも、会社の経営に対して影響力を持ちたいと考えることがあります。こうした場合は、黄金株を発行することになります。

ただ現経営陣とVCが意見対立し、この場合に拒否権を発動されると、まさにデッドロック状態となり経営が膠着状態となって、何も前に進みません。これが黄金株の悪い面です。

因みに、上場企業で拒否権付き株式を発行しているのは、国際石油開発だけですね。

また事業承継の際に、上で説明した取得請求権付き株式と組み合わせても活用できます。例えば、新経営者が未だ経験が浅くて十分な経営判断が期待できない場合には、旧経営者に後見的な役割として「黄金株」を与えます。そして、新経営者が経営者として自立できたときに、旧経営者は会社に黄金株の取得を請求できるようにします。

種類株式9. 取締役・監査役の選解任権付株式

取締役・監査役の選解任権付株式というのは、ざっくり言うと、取締役や監査役を選任したり、解任したりすることができる種類株式のことです。

例えば、株式の保有割合が少ないVCがベンチャー企業に役員を送り込みたいときに、VCがこの種類株式を取得すれば、役員を送り込むことが可能になります。

ベンチャー企業側とVCとの間の株主間契約で、VC側の役員をベンチャー企業に送り込むことを約束することは可能ですが、もしベンチャー側がこの約束に違反した場合、VC側は契約違反の責任を追及することは可能ですが、実質的にVC側の役員を送り込むことは相当難しくなります。

そこで、VCがこの取締役・監査役の選解任権付株式を取得しておけば、自分たちの役員を送り込むことが法律上保証されることになります。

種類株式のまとめ

最後に、種類株式のまとめとして、一覧表を作成しました。

種類株式の一覧

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