事件で逮捕される容疑者が、コンサルタントと名乗ることが、最近、特に多いように感じます。
こうなると、コンサルタント全体のイメージが悪くなるし、迷惑を被っている優秀なコンサルタントもいるはずです。
さて今回は、逮捕されたコンサルタントに関連して、脱税指南でニュースにまで取り上げられた事件のスキームについて簡単に解説します。
逮捕者が指南した脱税スキームとは?
スキームとは書きましたが、スキームを組むというほど頭を使うものではないし、工夫する必要もありません。
自称コンサルタントが「損益通算」というものを方法を悪用して、サラリーマンに脱税を指南したというものです。
コンサルタントとは、響きが良いですが、このコンサルタントが指南した方法が飽きれるほどに拙い。
脱税スキームとして利用された損益通算とは?
簡単に損益通算について説明します。
損益通算とは、例えば
給与所得100万円、事業所得△200万円の場合
合計△100万円
合計がマイナスなので所得税を支払う必要がないというものです。
この事件で問題なのは、書類上だけ副業をしているように見せかけ、見せかけの事業所得をマイナスにしていたという点で、実際には副業はしていなかったということらしいです。
実際に事業所得があれば、損益通算という制度は利用できます。
事業所得と認められるための要件は?
ただ副業による事業所得と認められるためには、業務が独立的に営まれているとか、営利性、有償性があるとかといった要件が必要なんです。これらの要件を実質的に満たしていなければ事業所得とは認められず損益通算はできないし、税務署にも否認される可能性が高くなります。
事業所得の要件 (図解 所得税より抜粋)
・業務が独立的に営まれていること
・営利性、有償性があること
・反復継続して遂行する意思と社会的地位が客観的に認めれること
ここで「否認」って、聞きなれない言葉かもしれませんので簡単に説明します。
例えば、税務署に交際費を否認されるとは、交際費が経費として認められないということです。経費として認められないので利益が増える結果、支払う税金も増えます。
税法の場合、節税するための形式的な要件を満たしていても、実質的な要件を満たしていないと税務署に否認されるリスクがあるので注意が必要です。安易な節税はリスクがあります。
脱税と節税の違いについては
脱税と節税の違いは何か?ちなみに租税回避も。
で記載しています。
自称コンサルタントが陥るパターンとして目にするのは、形式的には法律の適用を回避して違法行為にあたらないようにしているけれども、実質的にみるとただ脱法行為をしているだけという場面に出くわすことはよくあります。
話を戻しますが、逮捕されたコンサルタントは実務経験に関しては皆無だったはずで、少しでも実務経験があれば、このような拙いことは指南しません。
おそらく逮捕された経営コンサルタントはこの本を読んだのではないかと思います。