武富士事件の贈与税にかかる税務訴訟について、簡単に解説。

武富士と言えば、複数の女性ダンサーが踊るCMを思い出す人は多いと思います。

昔、深夜にテレ朝でトゥナイトという人気番組が放送され、そのCMの際には頻繁に武富士のCMが流れていました。当時、学生だった自分もまたトゥナイトを見ていた１人でした(笑)。

さて今回は、今更ですが、武富士事件の税務訴訟についてのお話です。

武富士事件の贈与税にかかる税務訴訟はどんなものだったのか？

武富士事件と言っても、グレーゾーン金利に関するようなものではなくて、父が長男に贈与した外国会社株式に贈与税がかかるかどうかについての事件についてです。

これまでいろいろな事件をきっかけに、贈与税が改正されてます。武富士事件はその事件の１つでもあります。

まず武富士事件について簡単に概略を説明します。

武富士事件の税務訴訟の概略

父が武富士株を所有するオランダ法人株を香港に住む長男に贈与した。

当時の法律では「 外国に住む者 が国外財産を贈与によって取得した場合、贈与税は課税されない」となっていました。

したがって、国外財産であるオランダ法人株式を香港に住む武富士長男が贈与によって取得しても日本の贈与税は課税されない、はずです。

しかし、この贈与税が課税されないということについて国税側は異議を唱えました。

この異議の内容を噛み砕いて説明すると、国税側は、この香港への移住は租税回避(贈与税の回避)を目的としたものであって、また完全に香港に滞在していたわけではなく、日本にも滞在していたことなどを理由に長男の生活の本拠は日本にあると主張しました。

そして国税側は1600億円の申告漏れを指摘し、1300億円を追徴課税しました。

租税回避についての簡単な説明については
脱税と節税の違いはなにか？ちなみに租税回避も。
に記載しています。

この国税の対応に関して、長男は応戦。

【参考】上の武富士事件の概略以外に、特徴的な長男の行動など

武富士事件における、特徴的な長男の行動などを、大手会計事務所などが公表している資料を基にまとめました。

・香港滞在の日数割合は65.8％で、日本滞在日数割合は26.2％だった。なお滞在日数は調整している。つまり日本の滞在日数割合が大きくならないように調整している。

・香港の滞在施設はサービスアパートメントだった。

・日本で使用していた家財等は香港に移動させていない。

この武富士事件の贈与税にかかる税務訴訟の争点は何だったのか？

さてこの事件の争点は、長男の「生活の拠点」がどこにあったか、と言う点です。

「外国に住む者が国外財産を贈与によって取得した場合、贈与税は課税されない」からです。

長男の生活拠点が日本にあれば、日本の贈与税が課税される。生活拠点が国外であれば、贈与税は課税されない。

生活の拠点がどこにあったかの判断によって、1300億円のキャッシュが動くので一大事です。

この事件は最高裁まで争われて、結果として長男の主張が認められました。最高裁は、長男の生活の拠点は香港と認定しました。

この最高裁の判断を、ざっくり説明すると

贈与税回避の目的があったとしても、客観的な生活の実体が消滅するものではないから、各滞在日数を調整したことをもって、香港に生活拠点がないとは言えない、つまり生活の拠点は香港にあった

と判断しました。

最終的に、国は還付加算金を含めて2000億円を返還したと言われてます。

税務上の判断の難しいところは、課税されないための形式的な要件を満たしていても、実質的に考えた場合、その要件を満たしていないと税務署に判断される可能性があるという点です。これが税務リスクです。プロにとっても判断の難しいところだと思います。

※ちなみに香港は贈与税なしです。

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