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ビジネスマンなら知っておきたい会社法改正をつまみ喰い解説①

      2017/04/05

法律が改正されたり、制度が改正されると新たなビジネスが生まれます。

例えば、今から5年以上も前のJ・SOX制度開始のときには、内部統制コンサルなど流行り、監査法人などは潤いました。

また毎年ある税制改正も、税理士にとってはビジネスチャンスになります。毎年税制改正がないとすれば、初心者税理士よりも企業の熟練経理担当者の方が実務に詳しくなりかねず、税理士にとっては仕事につながらないという事態も生じえます。

マイナンバー制度など法律・制度の改正や、規制緩和は、必ずビジネスチャンスに繋がります。

そこで今回は、改正に関連して、改正会社法(2015年5月1日施行予定)について、つまみ喰いで簡単に解説します。


会社法改正は1回だけでは書ききれないため何回かに分けて記載する予定です。また改正内容を全ては記載することはせず、知っていて損はないポイントだけをざっくりと解説します。

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社外取締役を置くことが相当でない理由を説明する必要あり

会社法改正の目玉の1つだった社外取締役選任の義務付けは見送りとなりましたが、“社外取締役を置くことが相当でない理由”について説明しなければならないことになりました。

この理由を説明しなければならない会社は、全ての会社ではなく、公開会社で大会社かつ有価証券報告書を提出している会社に限定されます。したがって中小企業は、適用外です。

率直に言って、“社外取締役を置くことが相当でない理由”は、上場会社にとっては厄介で負担な規定に感じているはずです。

社外取締役を選任すれば、この理由は不要になるので良いのですが、社外取締役を選任しない会社は、“社外取締役を置くことが相当でない理由”を工夫する必要が生じてしまいます。

素人的な理由付をすれば、株主総会で株主から厳しく突っ込まれます。

上場企業が素人的な理由付をする可能性はほぼ皆無だと思いますが、それなりの理由を考える必要が生じてしまうということです。

例えば、既に社外監査役が2人以上いることのみを理由として、“社外取締役を置くことが相当でない理由”とすることはできないとされています(改正会社法施行規則第124条第3項)。社外監査役が2名いるだけでは、その理由にならないということです。

なお以下に掲載した法務省大臣官房参事官の著書によると、

“相当でない”理由を説明したというためには、社外取締役を置くことがかえってその会社にマイナスの影響を及ぼすような事情を説明する必要がある

との記載があり、その理由は各株式会社の個々の事情により異なるとしています。


※ この本は、著者が官房参事官ということもあって、改正の趣旨などのがわかりやすく書かれています。

→ 社外取締役を置くことが相当でない理由については、下の記事の中でも記載しました。

参考:社外取締役を置くことが相当でない理由とは、どういうことか?

社外取締役選任の義務付けよりは、“社外取締役を置くことが相当でない理由”の説明の方が会社にとって負担は軽いのですが、今回見送りされた社外取締役選任義務は近い将来(施行後2年を経過した時点)に再検討されることになっています。

未だにオーナー色が強い上場企業にとっては、悩ましい改正の1つだと言えます。

社外取締役の“社外”の要件を見直し

改正前は、過去に1度でも会社とその子会社の業務執行に関与した人は社外取締役にはなれない反面、親会社や兄弟会社で業務執行に関与した人は社外取締役になれることになっていました。

しかし今回の改正で、親会社や兄弟会社の取締役などに加え、会社の取締役の配偶者などの近親者も社外取締役に着任できないことになりました。

一方、過去1度でも業務執行に関与していれば社外取締役にはなれなかった厳しい規定を改定し、退職後10年経過すれば社外取締役に就任できることになりました。

ちなみに取締役の社外性に類似しているものとして、独立性という考えがあります。独立性というのは、東京証券取引所のガイドラインに規定されている概念ですが、会社法の“社外性”よりも東証ガイドラインの“独立性”の方が概念が広いと言われています。

参考:東京証券取引所が求める社外取締役の独立性とは?

取締役の社外性の要件については、“社外取締役を置くことが相当でない理由”と違い、公開会社で大会社かつ有価証券報告書を提出している会社以外の会社についても適用されます。

監査等委員会設置会社という組織形態を新設

新たに監査等委員会設置会社という組織形態が新設されました。

この監査等委員会設置会社の主な特徴は
・監査役は置かれない
・取締役会のなかに監査等委員会を設置
・監査等委員会は3名以上の取締役で構成される
・その過半数は社外取締役の必要がある

というものです。

また監査等委員会の構成員である取締役は、従来の監査役と違って、取締役会での議決権があること、他の取締役と区別して株主総会で選任される点や報酬が決定される点にも特徴があります。

会社が望めば、この監査等委員会設置会社に移行することもできます。

そして、この監査等委員会設置会社の位置づけは、委員会設置会社の簡易版と言われています。

参考:三菱UFJが委員会設置会社へ。そもそも委員会設置会社とは?

株式会社の組織形態には、この委員会設置会社や監査等委員会設置会社、監査役設置会社など複数の形態があり、各々の運営形態が微妙に違うので頭が混乱してしまいそうです(苦笑)。

まとめ

いずれにしても、今回の改正で最も注目されている内容の1つは、社外役員に関する部分だと思います。
・社外取締役を置くことが相当でない理由
・役員の社外性の要件の見直し

この点について、法務部と総務部の方などは既にインプットされているかもしれませんが、その他の部署の方でも頭の片隅に置いておけば、クライアントとの雑談ネタとして使えると思います。

また、多くの上場企業は、特に“社外取締役を置くことが相当でない理由”の理由付にかんしてかなり情報収集していることと思われます。

合わせて読んでおきたい記事
ビジネスマンなら知っておきたい会社法改正をつまみ喰いで簡単に解説②

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