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シャープの減資は何を意味しているのか?

      2015/07/24

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シャープの減資に関連して、下の記事のアクセスが異常に上がっています。

参考:スカイマークの100%減資とは何か?

シャープがその資本金を1,000億円から1億円に減少するというニュースが伝わりました。

そこで今回は、シャープの減資について簡単に記載してみます。


シャープの減資についてあれこれまとめてみた

シャープの減資については、タックスメリットがあると伝えられていますが、そのタックスメリットや既存株主への影響、継続企業の注記などについて記載してみました。

※ 減資とは?

減資とは、資本金を減少すること。例えば、資本金を100億円から1億円に減額すること。

反対に、増資とは資本金を増額すること。例えば、資本金を100億円から200億円に増額すること。

シャープの減資によるタックスメリット

既にメディアでも報じられているように、シャープが減資をして資本金を1億円にすると税務的なメリットがあります。今回実施する減資の目的の1つに、このタックスメリットを享受することにあるのは間違いないので、まずはこのメリットについて簡単に説明します。

シャープが減資をすれば、繰越欠損金を最大限に利用できる

まずは、シャープが考えている繰越欠損金の利用について、具体例を使って簡単に説明します。

例えば、2014年に2,000億円の損失を出し、2015年に2,000億円の利益を出したとします。

2014年の損失を2015年まで繰越し、2015年の利益2,000億円と合算すれば、利益は0になります。利益が0になるので、法人税を支払う必要はありません。

これが繰越欠損金を利用する際のイメージです。

税金を支払う必要はないので、キャッシュフロー上はプラスの影響があります。

この繰越欠損金の利用に関しては、平成27年の税制改正も影響しているため、改正も含めて、追加で説明します。

参考:平成27年度税制改正について、つまみ喰いで簡単に解説①

実は、シャープは資本減少(減資)せず現在の資本金のままでは、この繰越欠損金のメリットを最大限には享受できないことになっています。

つまり、シャープのような大企業に対しては、この繰越欠損金の利用に制限(80%)がかかっています。

上の例を利用して補足説明すると、繰越欠損金は利益2,000億円の80%までしか利用できません。

具体的には、

大企業の場合は減資をしない限り、400億円(=2,000億円ー2,000億円×80%)に対して税金が発生してしまいます。

現在の利用制限は80%ですが、税制改正の影響を受けて段階的に引き下げられることになっており

・平成27年4月1日から平成29年3月31日までの間に開始する事業年度では、繰越控除前の所得の65%相当額まで引き下げ

・平成29年4月1日以後に開始する事業年度では、
繰越控除前の所得の50%相当額まで引き下げ

になります。

このように平成29年4月1日以後になると、大企業は減資をしない限り、利益が発生しても、繰越欠損金を十分に利用できなくなります。

上の例で説明すると、1,000億円(=2,000億円ー2,000億円×50%)に対して税金が発生してしまうということです。

減資をしない限りシャープも、繰越欠損金を充分に利用できませんが、資本金を1億円に減資すれば、制限なく繰越欠損金を利用でき、不要なキャッシュアウトフローを回避することができることになります。

シャープが資本金を減資をすれば、外形標準課税を免れる

外形標準課税は資本金1億円超の会社が支払う必要がありますが、シャープが減資をすれば、この税金も免れます。

DESについて

メディアによると、メガバンクがDESを利用して負債を資本(優先株)に転換すると言われているようです。

DESの内容については以下の記事が参考になります。

参考:DES デッドエクイティスワップ

ただ、シャープのような経営危機にある会社がDESを利用すると税務リスク(※)が発生するうえに、上で記載した繰越欠損金のメリットを最大限に享受できなくなる可能性があります。

また、DESを利用すれば発行済株式数が増え、1株あたりの利益が希薄化し、他の株主にシワ寄せがあります。

先行き不透明な現時点においてDESを利用するのは、株価に悪影響があると予想され、また近く開催される株主総会の波乱の一因になりかねません。

余談ですが、シャープと金融機関との関係で気になるのが、みずほコーポレート銀行と三菱東京からのシンジケートローンについて財務制限条項が付されている点です(直近の有価証券報告書参照)。

この財務制限条項とは、簡単に言うと、シャープの純資産額や利益が一定水準を下回る場合、シャープは期限の利益を失い、すぐに借入を返済しなければならないというルールです。

この財務制限条項についても、現在のシャープの純資産や利益水準を考えると、既に接触しているのではないかとさえ思えてしまいます。

※ この税務リスクについての説明は割愛します。またDESの実施時期等は公表されていないようです。

継続企業の前提に関する注記について

直近の開示書類を見る限り、シャープの財務諸表(FS)には継続企業の前提に関する注記(GC注記)が記載されていないようです。

GC注記の具体的内容については以下の記事が参考になります。

ちなみにスカイマークはGC注記の半年後に、不運にも民事再生対象になってしまいました。

参考:スカイマークの重要な疑義とはなにか?

おそらく、一般投資家の方々は、シャープのFSにGC注記が記載されるか否か、かなり気になっているでしょう。

平成25年3月期も、GC注記を記載する形式的要件は満たしていたようで、GC注記が記載されても不思議ではなかったと思いますが、GC注記を絶対阻止したいシャープ側と、できれば記載したい監査法人側のお話合いの上、監査法人側が寄り切られたのだと推測します。

シャープ側が、FSにGC注記を記載したくない理由には、株価への悪影響と株主総会の波乱回避などの理由があります。

監査法人側が、GC注記を入れさせたいのは、事後的な責任追及を回避したいためです。

平成27年3月期はGC注記が記載されない可能性の方が高いのではないかと思います。

来期は、2015年5月14日公表予定の中期経営計画の進捗状況などを勘案したうえで、GC注記を記載するか否か判断されることになるはずです。

ただ来期も、絶対にGC注記を阻止したい会社側と、出来れば注記を入れさせたい監査法人側のお話合いになるはずですが、今回減資という選択したシャープの経営状況を考えれば、そろそろ監査法人側がスイッチを入れることも考えられます。

因みに、債務超過もGC注記を記載する要件の1つとされていますが、シャープは現在、簿価ベースではギリギリで債務超過を回避している状況のはずで、時価ベースでは既に債務超過に陥っている可能性が低くないと予想できます(※)。

※ メディアで報道されている当期連結最終損益▲2,000億円を基に概算

シャープの減資で、既存株主への影響は?

今回のシャープの減資で既存株主への影響がどうなるかについてですが、未だ減資の具体的な方法が公表されていないようなので、よくわかりません。

ただ誤解してはならないのは、減資といっても100%減資のように株主を入れ替えるわけではなく、また減資したからと言って当然にして株式数が減少する(株主としての権利がなくなる)わけではありません。

あくまでも資本金が減少するだけです。

シャープは平成25年も欠損填補のために減資を実施していますが、この際も、株主の所有持株数には影響を与えていません。

減資について余談

シャープのような大企業が減資をする場合は、会社内部の事務作業量が相当増え、社員の業務量も相当増えます。

理由は、株主が多いことと債権者が多く、株主総会の開催手続きや債権者保護手続きにコスト・時間を取られるからです。

中小企業が減資をする場合は、株主が社長1人まはた極小数で、債権者数もそれほど多くないために、それほど手間はかかりません。

株主が1人の場合は、そもそも株主総会も開催せず、書類の作成だけで簡単に済ませます。

話を元に戻しますが、今回のシャープの減資は、対外的に、特に金融機関に対して、経営再建への本気度を示そうとしているのではないかと感じます。また金融機関も、シャープの本気度を見ない限り、面倒を見ること辞めるつもりだったのかもしれないし、もはやシャープにおいそれとは協力できないのだと思います。

ただ減資の情報が外部に伝わるということは、関係者の間でシャープの再建シナリオについて既に合意は得られているのでしょう。

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